
山本 毅さん・山本 有里さん
ドイツパンのお店 アムフルス
川のほとりにあるパン屋が届ける、パンの香ばしさと異国の香り。「らしさ」を追求すると、たどり着いたのは、ドイツ文化と地域を大切にする想い。2024年9月、2回目となる「MIYASHIRO オクトーバーフェスト」が開催されました。
本場の雰囲気を届けたい
毅さん:オクトーバーフェストは、毎年9月の終わりから10月の初めにかけてドイツ・ミュンヘンで行われる、世界最大のビール祭りです。今、日本でもいろいろな場所で開催されていますが、どうしても商業的な雰囲気が強いように感じます。だから、ドイツの文化をもっと伝えられるようなイベントにしたいと思いました。
有里さん:ビールだけじゃなくて、ビール“も”あるイベント。10月という季節と結びつけて、もっと文化的な切り口にしたくて。
毅さん:僕はドイツで製パンマイスター※の資格を取っていて、友人にはハム・ソーセージのマイスターもいます。そういう仲間と一緒にやれば、本場に近い、より本格的なオクトーバーフェストができるんじゃないかと思ったんです。
(※マイスター…ドイツの国家資格のひとつで、特定の職種における高度な専門技術と知識を有することを証明する資格)
有里さん:子どもたちに、もっと異文化を知ってもらいたいという気持ちもありました。世界にはいろいろな文化や環境、言語があるということを、体験を通して感じてもらえたらいいなって。だから、どこにでもあるようなものではなく、宮代町で、“アムフルスらしい”オクトーバーフェストをやりたい、というのがスタートです。
毅さん:オクトーバーフェストに限らず、ドイツのイベントをやりたい気持ちはずっとありました。たとえばクリスマスマーケットも有名ですが、年末はどうしてもお店が忙しくて…やっぱりお店があってこその僕たちなので、ドイツらしさを感じてもらえるイベントとしては、オクトーバーフェストがいちばん現実的かなと考えています。
手探りから 手ごたえへ
毅さん:自分たちなりのオクトーバーフェストにする上で、「ドイツ文化」というテーマは、絶対にブレさせたくありませんでした。出店者の方々も、基本的にはドイツに関係のある方にお願いして。もちろん地元・宮代の方々にも参加していただいていますが、できるだけドイツに関連するものを出してもらっています。
アムフルスとして、今回は「ドイツにまつわるクイズラリー」を開催しました。会場内にドイツ国旗のタスキをかけた人が3人いて、その人たちにクイズの答えを言うと、スタンプがもらえる仕組みです。スタンプを3つ集めた人には、ドイツの伝統的なクッキー「バニラキプフェル」をプレゼントしました。
子どもたちは「ドイツのタスキの人どこ〜?」という感じで、すごく楽しそうに参加してくれて。一方で、タスキをかけた人たちは、ずっと忙しくしていました(笑)。
有里さん:ポイントは、声をかけるときも、答えを伝えるときも“ドイツ語”でコミュニケーションをすること。「ドイツ語ってこういう言葉なんだ!」と、ちょっとでも体感してもらいたかったんです。
クイズの内容も工夫して、たとえば「シンデレラをドイツ語でなんて言うでしょう?」など、子どもたちが興味を持ってくれそうな問題にしました。それ考えるのも結構大変でしたね (笑)。
有里さん:1回目は、どれくらい来てくれるのか全く分からず、手探りの状態で。ある程度は準備をしたものの、予想を大きく上回る来場者があり、出店していたお店の食べ物が1時間も持たずに、すべて売り切れてしまうほどでした。そこで今回は、出店者の方々には「とにかく多めに準備してください!」とお願いしていました。
当日はおかげさまで大盛況!香川県から来てくれたハム・ソーセージのマイスターとアムフルスの限定コラボ商品“ドイツサンド”も好評で、「また食べたい!」と多くの人に言ってもらいました。
イベントが終わった後も、お客様から「この前行ったよ!楽しかった!」、「ビールも美味しかった」と直接声をかけていただけるのは、本当に嬉しいですね。
2024年開催のチラシより
毅さん:多くのお客様に来ていただけた理由を振り返ると、チラシ配りやSNSでの発信といった地道な努力が大きかったのだと思います。お客様が情報を広めてくださり、スタッフも熱心にチラシを渡してくれていました。本当にありがたいことです。
実際、山形や東京、千葉、新潟など、遠方からも楽しみにして来てくださって、お客様に支えられているなと心から思います。
“アムフルスらしさ”を求めて
有里さん:「大人はビール、子どもは遊び」で、どちらも楽しめるイベントにしたかったんです。そういう温かくて、和気あいあいとした雰囲気がアムフルスらしさでもあり、宮代らしさでもあるなと。その想いが、手作り感のあるイベントに繋がっているのだと思います。
「子どもも楽しめるようにする」という考えは、自分に子どもができたことが大きいです。子どもが生まれて、子育てしながら仕事するのは、本当に大変なんです。そんなときに助けてくれたママ友がいたりして、子どもをきっかけに広がった繋がりがたくさんあります。
毅さん:繋がりというと、手伝ってくれる周りの人たちに意見をもらって、内容が膨らんでいくことも多いです。打ち合わせをしていても「こういうのあったらいいんじゃない?」と、いろいろアイデアを出してくれて。「あの人こんなことやっているから、声かけてみたら?」と話がどんどん広がって、人の輪もどんどん大きくなっていって。役場の方もそうですし、手伝ってくれる周りの人たちとの関係もあって。人に恵まれているなと感じます。
毅さん:2回目となる今回は「子どもたちが遊べる場所を作ったらどうか」という提案があり、「シュピールプラッツ※」を作りました。工作や輪投げができたり、童話の読み聞かせがある、ドイツらしさを楽しみながら遊べるブースです。そういう活動をやっている人がいるからと紹介してもらって実現したのですが、これが想像以上の反響で。
(※シュピールプラッツ…ドイツ語で「遊び場」の意味)
オクトーバーフェストは、元はビールのイベントということもあり、どうしても「大人が飲んで、飲んだら帰る」という流れになってしまいます。ですが、遊び場を作ったことで、子どもたちからは「帰りたくない!」という声が多くて。そういった意味でも、本当にありがたい提案でした。
有里さん:おもちゃも手作りです。たとえば輪投げをやろうとなったときには、手作りでビール瓶を模したピンと、ドイツ国旗をイメージしたカラーのリングを作ってもらいました。とても温かみのある遊び場になり、あれは私たちだけでは思いつきませんでした。
宮代といったら、になるまで
毅さん:3回目も、必ずやりたいです。今さらやめられないです。周りからの期待というのもありますし、自分たちもやりたいと思っています。
有里さん:今まで来てくれた人がまた来てくれたら嬉しいし、これまでの評判を聞いて「行ってみようかな」と初めて来てくれる人がいたら、それもすごく嬉しいです。次回も、今までの楽しいところを、そのまま引き継いでいけたらいいなと思います。
有里さん:こういうイベントって、続けることに意味があると思うんです。例えば「あの時はあったけど、この時はなかった」というよりも、ずっと続けることで「宮代にはこういうイベントがあるよね」と広まっていく。宮代=オクトーバーフェストみたいに定着してくれたらいいなと思います。
毅さん:続けていく中で、ドイツの文化がもっと広まっていってほしいですし、みんなが“ドイツ推し”になってくれたら嬉しいです。
写真提供:ドイツパンのお店 アムフルス
【編集後記】 「子どもも楽しめるオクトーバーフェスト?」と意外に思われた方もいるかもしれません。このイベントは、ビールが飲めなくても楽しめる、手作りの温かさと本場ドイツへのリスペクトに溢れています。会場には、ドイツ文化を五感で楽しめる仕掛けもたくさん。今は子どもの参加者が、大人になってビール片手にまた訪れる… そんな未来も楽しみになります。第3回は、2025年9月15日(月・祝)に開催されます。 取材日 令和7年2月20日 |
<関連リンク>
山本さんから見た宮代町を、もっと知りたい方はこちら。
移住者インタビュー Vol.06「この街で本格ドイツパンを」
宮代町の魅力を毎回さまざま視点から取り上げ、ご紹介しています。
リーフレットは、宮代町役場や無印良品東武動物公園駅前などで配布しています。
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