ここは小さい時から
いつも来ている図書館から新しい村に続く道
だから、どこに何があるか全部分かってる
今日は学校が早く終わったから妹と遊びに来たんだ
この前はここにすごく大きい鳥がいてびっくりした
何ていう名前の鳥か分からないけど
新しい村の方まで歩いてくると、この沼がある
僕はこの沼が一番好きなんだ
休みの日に来ると魚釣りしてる人や
散歩してる人、買い物に来た人で賑わってる
「ここはジェットコースターが見えて
音も時々聞こえて来るから好きなんだ」
「お兄ちゃん
ジェットコースター乗れないくせに」
「うるさいなぁ」
僕の学校は新しい村のすぐ隣にある笠原小
竜宮城って呼ばれているピンク色の
不思議な形の建物だよ
街から近いのにすぐ裏に
こんなに自然があるのが珍しいみたいなんだ
僕にとってはこれが普通なんだけどね
「リカ、山崎山へ行ってみようよ」
「いいけど」
ここはトラスト保全地
埼玉に14ヶ所あるんだって
その1つがこの山崎山
「小学校の授業でも来た事あるよね」
「うん。ここの草とか実とか
持って帰っちゃいけないって習ったよ」
今日はリカに“あること”をするために
ここへやってきたんだ
ボーイスカウトで
お兄さんが僕にしてくれたこと
「リカ、目をつぶって」
「えっ?なんで?」
僕は、目をつぶったリカの手を引いて歩いた
「目を開けてごらん
今日からこれがリカの木だよ」
「えっ、私の木?」
森の中に自分の木があるって面白い
なんだかその木が家族みたいな気持ちになる
僕の木ができた時
この森のこと前より大事にしたくなったんだ
だから妹にもやってあげようって思った
リカの木と僕の木にさよならを言って山崎山を出た
「じゃあ今度はほっつけ田の方へ行ってみようよ。
リカが植えた苗、大きくなってるかな?」
山崎山からほっつけ田もすぐ近くなんだ
「川の中に何かいるなあ」
「お兄ちゃんが田植えした時、どうだった?」
僕の小学校は2年生の授業で田植え体験がある
「ずいぶん前で覚えてないけど
ドロドロになって面白かったかな」
妹達が植えた苗は、ずいぶんと伸びていた
「お兄ちゃーん
芝生広場まで競走しようよ!」
「あっ!リカずるいよ!」
僕らは走った
「はあ、はあ、着いた」
新しい村の芝生広場は広くて気持ちいい
「地面って意外と冷たいね」
「草のにおいがする。
あれ?雲が動いているみたい」
「そうだよ、雲は風に流されて動くんだよ。
今日知ったの?」
「・・・」
「そろそろ帰ろうか。
おなかすいちゃった」
「うん、おやつなんだろうね」
ここに越してくる前、そこそこ都会に住んでいた
君たちがこの土地を
気に入ってくれてるのかどうか分からないけど
パパも私もここだ!って思っちゃったんだよね
いつか君たちが、ここに住んでいる事で
どんなに心豊かに暮らせてるか
気づいてくれたら母は嬉しいな
・・・
Photo by Naoko Hayashi
Writing by Naomi Yokokawa
(2018年7月10日に掲載された記事です)